PLACE:千葉県検見川浜
DATE:2008年8月2日〜3日
REPORT:byJ85コング鈴木
ここ検見川浜で毎年行われている夏のイベントサマーカップ。すでに20年近くの歴史を刻んでいる。古くはレースボードの大会として行われ、近年では実業団がアップウインドの大会を開催していた。このサマーカップが日本のプロサーキットであるジャパンサーキットのダウンウインドスラロームとして行うようになったのは去年の夏。今年でサーキットとしては2回目となる。例年この時期の検見川浜は、「梅雨明け一週間」などとよく言っていたが、梅雨明け後、太平洋高気圧の張り出しの縁と重なり、一週間近く南西が吹き続けることも珍しくない。そして、梅雨明けを合図に夏本番を向かえる検見川浜は、都心からも近いこともあり、関東近郊よりサーマルを狙うウインドサーファーで賑わいを見せる。駐車場、ヨットハーバー、など施設も充実しているので、ウインドサーファー以外にも週末の海を楽しむ家族連れや釣り人などが数多く訪れる。しかし、今年の夏は梅雨明けも例年に比べはっきりせず、気圧配置もいまひとつ。梅雨明け後に訪れる南西もほとんど吹かない日が続いていた。果たしてサーキットは吹くのだろうか。
今大会は昨年度沖縄で行われた沖縄カップ以来、今季初のダウンウインドレースになるため、各選手にとって非常に重要な大会となっているはずだ。実戦から遠ざかっている選手が多かったことだろう。オレも自分自身の調整がうまく行っているか分からなかった。信じるのは信頼している自分たちのセールやボード、そして何より自分自身の腕だけだった。
大会前日、日本各地より前のりの選手が検見川浜入りし、少しでも調整しようとしている。全国的にもこのところ風が吹いていない。なかなか調整がうまく行ってない選手が多かったのだ。30分でも吹いてくれればと選手全員が思い世寄せている。しかし今大会はJPWサーキット。過程はどうあれプロが戦う場だ。結果がすべての世界である。言い訳など通用しない世界。みんなぶっつけ本番を覚悟していた。しかし、ギリギリの時間になって、奇跡的に風が届き何とか1時間ほど調整する時間を持てた。まったくないよりはましである。調整を終えた選手は口々に「乗りづらい海面だ」という。昨年はラッキーなことに台風と重なりハードコアな検見川浜のレースとなった。そして今年は、検見川浜の夏らしい風の中レースが行われていくことが予想される。いわゆる弱めのサーマルで、セールサイズはおそらくマックスサイズ。どんな戦いが繰り広げられるか明日からの大会が楽しみとなった。
大会1日目。
連日関東地方では猛暑日が続いており、大会初日も厳しい暑さに見舞われた。朝から気温はぐんぐん上がり30度を越え、風は午後から上がってくる予報。この厳しいウエイティング時間をどのように過ごし、どれだけ体力を消耗せずに気持ちをキープできるかも重要なポイントとなる。それぞれが工夫を凝らして時間を過ごしていた。そして、風が上がりだしたのは潮の上げだした午後からだった。予報通り南西からやや弱めのサーマルが吹き始めた。なかなか上がりきらない風の中、レースはオープンクラスから静かにスタートした。オープンクラスはミニマムウインドの規定が設けられてないので走るか走らないか微妙な中、レースがスタートし熱いバトルが繰り広げられた。
しばらくして風速も弱いながらも安定しだしたそのときにサーキットクラスのZ旗が掲揚された。いよいよスタートである。海上の風速は10〜11ノットとミニマムぎりぎりのコンディション。そして、ここは検見川。潮と堤防からの返しの波、そしてうねりが複雑に絡み合ってなかなか癖のある海面だ。選手たちは風速以上にボードが走らない感じを受けてしまう。おそらくフラットな海面ならば何の問題もなく走る風なのだろうが、この複雑な海面がレースに面白いスパイスを与える。各ヒート弱いながらも順調に消化していき、途中、風が落ちキャンセルヒートをはさみながらもファイナルヒートを迎えた。ミニマムぎりぎりのコンディション。ファイナリストたちは少しでも前でスタートをクリーンに決めたいため、リコールぎりぎりまでスタートラインを攻めてくる。オープニングスタートを決めたのは関西甲子園からやってきたJ17寺前。下から飛び出してファーストマークへ飛び込んでいった。それを追って前年度チャンピオンのJ25浅野、そしてこの夏、PWAを経験してきたオレJ85コングが続く。うねりに翻弄されやや膨らんだ寺前の隙を突いて浅野、コングと交わしていく。マーク回航後はうねりと軽い風の影響でなかなか走り出さない。渾身の力でセールを漕ぎまくる。下からすっと走り出した浅野はコングを上へ抑えながらセカンドマークへ。一瞬遅れたコングは浅野を追撃する。その後つかず離れずのデットヒートを制したのはJ25浅野、次いでJ85コング、3位争いもファースマークのマーキングで競り勝ったJPN67山田がデットヒートの末JPN1合志を押さえてフィニッシュ。開幕戦ということと沖縄以来誰とも合わせていなかった浅野は手探り状態の中、開幕レースを制した。
・1レース
浅野 マウイセールTR-4 9.2 BHワークスプロト77 テクトニクス スピットファイアー 46
コング NSワープ F2008 9.0 F2 SX-XL W80 135リッター コンプリート 48
山田 NP RSR 9.0 JP 114 W76 デボシーSL-1 44
合志 セバーン コードレット 8.3 スター アイソニック 122 セレクト エリート 45
大会1日目は残念ながら1レースで時間切れとなり終了した。明日は今日よりも予報がいいので、どれだけレースがこなせるか? また、浅野以外の選手がどう修正してくるのか?
大会2日目。
昨日に引き続き夏の熱さが選手たちを襲う。今日は昨日よりも風が強く吹く予報が出ているので各選手ミドル風域も想定した準備に入る。風は朝からすでにそよそよし始め、昨日よりも早く吹き出しそうな感じがしていた。
前日1位で終えた浅野は、間隔の空いてしまったレース感や調整不足をこの1レースをトップで終えることによってすべてを修正し万全の体制となっていたようだ。オレも前日、浅野を追い詰めたことで「やれる! やれるんだ!」という気持ちでいた。もちろんPWAという世界の舞台を経験したことによって、オレの中のいろいろな物が変化したことが1番大きな要因だ。
風は予想通り前日よりも早く吹き出し2レース目がスタートした。前日よりも強く吹く風の中相変わらずの海面が選手たちを襲う。風は12〜14くらいだろうか。今日も検見川特有の軽い風「選手たちは前に出なければ負ける」とギリギリを狙ってスタートラインを攻める。こうした厳しいコンディションによって多くの選手が我慢しきれずリコールの餌食となって消えて行った。それでも順調にヒートを消化し2レース目ファイナルヒートのスタートが切られた。前日の走りで修正した浅野がスタートから飛び出しファーストマークへ突っ込んでいく。それを追って山田、合志と続く。そして久々にサーキットに戻ってきたJ120中川、さらに強引にオレがインに割り込んでいく。安定した走りを見せる浅野は後続を寄せつけずに2度目のトップフィニッシュ。ついで1レース目の借りを返すかのごとくサードマークの立ち上がりを制した合志が飛び込んだ。3位には最終レグなかなかスピードののりからなかった山田がコングの追撃を交わしきり何とか逃げ切ることが出来た。この時点でトップ浅野が他をやや引き離しついで合志、コング、山田が同ポイントでつける展開となった。
・2レース
浅野 マウイセールTR-4 8.4 BHワークスプロト77 テクトニクス スピットファイアー 46
合志 セバーンコードレット 8.3 スター アイソニック122 セレクト エリート 43
山田 NP RSR 8.4 JP114 W76 デボシーSL-1 44
コング NS ワープF2008 9.0 SX-XL W80 135リッター コンプリートカット 45
風は良い感じで吹き続けている。そして、時間的に見てもこの3レース目が最終レースになりそうな感じがしていた。選手たちは慎重にコンディションの変化を予想している。実際風が吹け上がるか、またそれとは逆に落ちていってしまうかは正直分からない。ただ、このレースを制したものがレースを制する。その事実だけが明確であった。ここが今大会の最大の山場だ。
目下トップは1.4ポイントの浅野。ついで同ポイントの6ポイントで合志、コング、山田が続く。優勝に1番近いのは浅野。しかし最終順位によっては続く合志、コング、山田にも優勝のチャンスが残っていた。このレースを制したものがダウンウインド初戦の検見川浜サマーカップをぐっと引き寄せることが出来る。優勝争いはこの4人に絞られた。
最終3レース目を迎えるころから海面にはうねりのほかにもう一つ選手を苦しめる要因が出来ていた。弱いながらも吹き続けたな南西に乗って東京湾を浮遊していた大量のゴミや藻が流れ込んできたのだ。各ヒートを消化していく中、不運にもこのゴミの餌食になって力を発揮できずに敗れていった選手も多くいた。それでも順調に勝ち上がったファイナリストたち。その中には優勝を争う4選手も名を連ねていた。泣いても笑ってもこの一本で決まる。緊張のスタートが迫る。かなりはやめのアプローチとなった第3レース。我慢しきれずにJ26竹中がリコールとなる。仕切り直しだ。再び各選手たちが再スタートを慎重かつ大胆に責める。飛び出したのはやはりこの男、チャンプ浅野。それを追ってJPN1合志、ついでJPN67山田、JPN22国枝も続く。そしてJ85コング。逃げる浅野は順調にファーストマークを回航し走っていく。ついで合志。そしてファーストマーク回航後、下に落として勝負に出たコングが猛追を見せ、国枝、山田を交わし飛び込んでいく。ほぼこのレースも勝ちを確信した浅野だったが、彼に今大会最大のアクシデントが襲う。2マークを目前になんとビニールを引っ掛けて急減速。どうにも取れないビニールを2マーク回航後に一旦止まって取ったのだが、走り出すとすぐにまたすぐに別のビニールを引っ掛けてしまったのだ。結局2度も降りてビニールを取る作業を余儀なくされた浅野は大きく順位を落とした。その隙に合志が浅野を交わしトップに。じつは彼も例外でなくファーストマークからセカンドマークにかけて藻を引っ掛けて走っていた。ただラッキーなことに彼はキックジャンプによって藻を取ることに成功。あとは3マーク、フィニッシュと向かうだけとなった。ついで2マークに合志と絡んで飛び込み、大きく膨らんだコングのインを突いて国枝が巻き返す。ついでコング、山田。何とか順位を上げよと国枝を追うコングだが2マーク回航後すぐに30センチくらいのシートを引っ掛けてしまい、キックジャンプを試みるがまったく取ることが出来ずに引っ掛けたまま3マークフィニッシュと走る羽目に。その間にも合志、国枝と順調に3マークを回航。そしてコングと同時になんと2度もビニールの餌食となった浅野が巻き返し3マークへ。この波乱の最終レースを制したのはJPN1合志、ついでアップウインドシリーズを制して好調なJPN22国枝が入り、3位にJ25浅野となった。そして急激にスピードを落としてしまったオレは何とか山田の追撃をかわし4位に飛び込んだ。ついで5位に山田。今大会いまひとつ歯車がかみ合わなかった山田は常に後手に回った展開となってしまった。そしてこの3レースを持って今年度サマーカップが終了となった。
・3レース
合志 セバーン コードレット 8.3 スター アイソニック 122 セレクト エリート 43
国枝 ガストラベーパー 8.2 スター アイソニック122 テクトニクス F8 44
浅野 マウイセールTR-4 8.4 BHワークスプロト77 テクトニクス スピットファイアー 46
コング NSワープF2008 9.0 F2 SX-XL W80 135リッター コンプリート 48
優勝は昨年度チャンピオンのJ25浅野則夫。今や日本のウインドレース会では無敵の強さを誇る。浅野は「なかなか人と合わせる時間もなく実戦からも離れていたので、正直自分がどれぐらいチューニングが出ているか不安はあった。しかし、信頼できるバーレーヘッヅとマウイセールが今回も自分を助けてくれた。まったく手探りで走った1レース目にトップを取れたので自信を持つことが出来た。2レース目、3レース目はセッティングも修正したので更に自信を持って挑めた。勝ててよかった。」そして2位に先月、待望のショップをオープンさせたJPN1合志。「ショップのオープンやキッズプログラムなどが忙しく、またハイウインドのトレーニングも遠ざかっているのでやや不安もあった。ただライトウインドはラッキーなことに乗る時間をまずまず持てたので逆に良かった。実戦から結構時間がたっていたので終始スタートが決まらず苦しんだが、5月のPWAを経験して自分自身の走り方や道具のチョイスに自信を持って望めたのでそれがよかった。スタートミスもセバーンセール、スターボードの走りがカバーしてくれたのでこの結果を得られた。」3位にPWAを経験し世界の厳しさを実感してきたオレ、J85コング。「ノースセール、F2の組み合わせはパーフェクトだった。後は自分の問題。ヨーロッパでPWAの走りを見て今までの自分が正直なにをやっていたのかまったく根本から覆され、めちゃくちゃへこみました。ただ、こうした経験で、自分は常に世界に目を向けていたい。そして、その過程として日本で勝ちたい。そう思う気持ちが強くなりました。悔しいけど負けは負けです」
今大会表彰台に上がった選手は口々に信頼できる仲間やセール、ボードがあるからこそ自信を持って戦うことが出来るという。もちろん、選手全員がそう感じながら戦っているに違いない。また、近年各地域にレーシングスクールやチームが発足し選手育成環境も整い始めている。こうした環境の中から新しい選手が増え、いつの日か世界で活躍できる選手も現れてくることだろう。次のダウンウインドレースは和歌山。ここまでにどれだけ修正できるか。また、新しく浅野を脅かす選手が現れるか。また、熱い走りが見られるだろう。